誰に対して言っているのか分からないホームページ

ある地方の環境関連製品製造販売業S社のT社長からホームページコンサルティングの依頼メールがあり、折り返し電話をしたところ、何か焦ったような声でこう切り出されました。

自分の製品は、広く世の中のためになると思っているんです。3年前に友人に頼んで無料で作ってもらったホームページですが、先日お客さんから『言いたいことがわかりにくい』と言われてしまいました。
自分自身はどこがどう『わかりにくい』かが分からず、困惑しています。

それに…自分が思っているほど売れません。もちろん、簡単でないのは分かっています。ただ、広く世の中のためになるものですから、もっと売れて良いと思うんです。これについて、何をどう直せばいいのかご教示いただきたいんです

S社ホームページの目的は「自社製品の販売」です。業界で広く使われている「従来品」に比べて更に環境にやさしい点がウリで、また「S社製品」は一般人でも使えるところも特徴になっているようでした。

S社HPは、中小企業のHPとして『よくある過ち』を犯していると感じました。

●「当社製品でエコロジーな生活を。家族の笑顔に▲▲」など、漠然としたキャッチコピー
●技術的な説明(スペック情報)が非常に多く、ビジネス用HPというより研究論文のような雰囲気
●白い背景のページで白い文字で隠しキーワードを書くなどの、ネット黎明期に流行った「好ましくない検索エンジン対策」の実践

しかし根本的には、
●誰に対して言っているのか分からない説明文
●友人に頼んでHPを作成、改変、編集していくという運営体制
というものが問題であると確信しました。

まずは「誰に対して言っているのか分からない説明文」について。

中小企業のHPでは「誰に対して言っているのか分からない説明文」をよく目にします。
幅広く情報発信し、少しでも多くのお客様に販売したい。その気持ちは痛いほど分かります。
しかし、あくまでHPは「選ばれて、見られるもの」であるという認識を持たないと、苦労が水泡に帰すことになります。換言すれば、HPは「見せかた」ではなく「見られかた」に注意して作成、運営すべきなのだと思います。

ネットユーザーは、自分の「困りごと」「悩み」「解決したい問題点」を軸にネットで「検索」します。逆に言えば、自分の「困りごと」「悩み」「解決したい問題点」を端的に解決してくれそうなHPを選ぶのです。
幅広く「皆さん」宛に発信されたメッセージに比べて、「××でお困りの■■なかたへ」などのメッセージに「食いつく」のは自然なことでしょう。

広く「見せよう」とするから、メッセージがブレるし、効果もないのです。一方「誰が当社HPを選び、見るのか」という発想をすれば、「そもそも対象者を絞ったメッセージでないと届かない」という「事実」にすぐ気づくはずです。

T社長に対しては、
●S社製品の価値が分かる重要顧客である『自分で安全な製品を使いたい施主』『顧客から環境問題に関して厳しく要求されている工務店』の2つにターゲットを分けて、それぞれ向けにページを作ること
●またそれぞれの「重要顧客」が理解しやすいように、
・S社製品の優位性を説明し、またその根拠を示す
・返品保証など、安心して購入いただける体制であることを示す
などの流れでHPを構成していくこと
●よく聞かれるような事柄(取引に際し疑問に思うであろう事柄)についてのQ&Aを載せること
●「重要顧客」がネット検索する時に入力するであろうキーワードを軸に、
・本文中の「この製品は」などの「あいまいな言葉」を、当該キーワードが含まれた具体的な言葉に置き換える
・ページの中で当該キーワードが多く出現するように、お客様の声や利用エピソードなどの文章(コンテンツ)を増やす
などの「好ましい検索エンジン対策」を実践すること
などをご提案しました。

2つ目の問題点は「友人に頼んでHPを作成、改変、編集していくという運営体制」です。

私は「中小企業のHP活用」という分野に関わって17年以上経ち、現在も毎日のように中小企業経営者様と話す機会がありますが「友人に頼んで無料で作ってもらったHP」で経営的な効果をあげられた例をひとつも知りません。

経営効果を求めるHPを「友人に頼んで」「無料で」作ってもらう。コストを抑える良い方法のように思いがちですが、成果をあげることができなければ、その「成果の出ないHP」を開設運営していた時期がそのまま機会損失になります。
HP制作を依頼するほうは「友人だからきっと良いものを作ってくれる」という、根拠のない淡い期待を抱きます。一方、請けた友人側は「友達からの依頼だし、無料だから、納期が遅れてもよいか。精度が低くてもよいか」という考えになり、結果的に「誰も満足しない、効果の無いHP」だけが残ることになります。
修正についても、本当はすぐに直してもらいたいが「無料で頼んでいるから…」という負い目から、修正作業が遅くても強く言えず我慢することになります。
数ヶ月後、「ひょっとして経営効果が無いのでは」と根本的な問題に気づいても無料で作ってくれた友人に文句も言えず、その後、友人に気付かれないようにHP制作会社に依頼して有償でリニューアルする…というパターンが多いのです。

私は、中小企業がHPを立ち上げる際は「自作する」「外注する(有償での制作委託をする)」の2択しかないと考えています。
S社のT社長にも、これを申し上げ、T社長は自らHP編集ソフトで手直ししていく手段を選択しました。

S社製品はまさに「広く世の中のためになる」ものであり、また本件で付帯的にアドバイスした「ブログを活用した検索エンジン対策」「SNSを使った『人柄』の情報発信」などを実践していただいた結果、意中のマーケットで国内一位の販売高になるまでに成長しました。

「家内の病気をきっかけにひとりで開発した当社製品が、こんなに多くのかたに使っていただけるとは…。ネットの本当の『使いかた』が分かって本当に良かったです」と、電話口の声が弾んでいるようでした。

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